FX の通貨ペアの選び方で迷う人は、米ドル/円以外に何があるのか、スワップが高い通貨を初心者が持ってよいのか、仕事の後の夜にやるならどのペアが合うのか、という3つで止まりがちです。この記事は「どのペアが良いか」というランキングではなく、自分で選ぶための基準を整理します。
結論は次のとおりです。通貨ペアは流動性・スプレッド・値動きの大きさ・スワップの4つの軸と、取引できる時間帯で選びます。初心者はまず、取引が多く情報も多いペアから始めます。スワップの高い通貨は、値動きによる為替差損のリスクとセットで考えます。
なお、FX は元本を保証する取引ではなく、損失が出ることもあります。この記事は利益を約束するものではなく、判断は自己責任でお願いします。数値は特に断りがなければ2026年10月時点で確認したものです。
FXの通貨ペアの選び方は「4つの軸」で決める

通貨ペアは、流動性・スプレッド・値動きの大きさ・スワップの4つの軸に、自分が取引できる時間帯を重ねて選びます。大切なのは「どのペアが有利か」ではなく、「自分の資金、生活時間、リスク許容度に合うか」で決めることです。
先に結論|迷ったときの考え方
迷ったときは、次の3点を目安にしてください。
- 最初の候補は、取引量が多く、解説や情報が豊富なペアから選ぶ(例: 米ドル/円、ユーロ/米ドル。これは推奨ではなく、取引量が多いペアの例です)。
- スワップの高さだけで選ばず、値動きの大きさとセットで確認する。
- 自分が画面を見られる時間帯に、コストと値動きが許容できるかを確かめる。
この記事で分かること
続く節では、通貨ペアの表記の読み方、メジャー通貨とマイナー通貨の違い、4つの軸の見方、高スワップ通貨のリスク、時間帯との相性を順に説明します。最後に、候補を1〜3個に絞るチェックリストを用意しました。
通貨ペアの読み方|基軸通貨と決済通貨

通貨ペアの表記は、左が基軸通貨、右が決済通貨です。基軸通貨は「1単位あたり」の通貨、決済通貨は「その価格を表す」通貨です。
左が基軸通貨、右が決済通貨
たとえば「米ドル/円 = 150円」という表記があったとします。この150は説明のための仮の数字です。これは「1米ドルの価格が150円」という意味で、左の米ドルが基軸通貨、右の円が決済通貨です。
「円/米ドル」と書かない理由は、市場の慣習によるものです。通貨ごとに表記の順番が慣習で決まっていて、米ドル/円、ユーロ/米ドル、英ポンド/円のように並びます。米ドル以外の通貨と円の組み合わせ(ユーロ/円、豪ドル/円、英ポンド/円など)は、まとめて「クロス円」と呼ばれます。
「買う」「売る」は何を意味するか
FX で「買う」とは、左の通貨を買って右の通貨を売る取引です。「売る」はその逆です。米ドル/円を買った後に価格が上がれば、買った米ドルの価値が円に対して上がったことになり、買いのポジションには利益が出ます。
仮の数字で確かめます。米ドル/円を150.00円で1万通貨買ったとします。価格が151.00円に上がると、1円の上昇で約1万円の利益になります。反対に149.00円に下がると、約1万円の損失です。同じ幅の動きでも、売りから入れば損益の向きは逆になります。
なお、1pip あたりの価値は通貨ペアによって変わります。計算の方法はFXのpipsとロットの計算方法にまとめています。
メジャー通貨・クロス円・マイナー通貨の違い

通貨ペアは、よく取引される順に、メジャー、クロス、マイナー(エキゾチック)と分けて呼ばれます。きっちりした公的な定義があるわけではなく、目安の分類です。ここでは、取引量の実際の数字を確かめながら、それぞれの違いを整理します。
メジャー通貨ペアとは
メジャー通貨ペアは、米ドルが絡む主要な組み合わせを指すのが一般的です。ユーロ/米ドル、米ドル/円、英ポンド/米ドル、豪ドル/米ドルなどが当てはまります。
国際決済銀行(BIS)の調査では、2025年4月の世界の外国為替取引で、米ドルが取引の約89.1%の片側に入っていました(2026年6月公表の確定値の詳細表から筆者が計算)。ほとんどの取引で、米ドルが一方の通貨になっているということです。
BIS の詳細表(2026年6月公表の確定値)から筆者が計算すると、世界全体の1日平均の取引高(約9.51兆米ドル)のうち、ユーロ/米ドルが約20.7%、米ドル/円が約14.4%を占めます。
取引高そのものは、ユーロ/米ドルが約1.97兆米ドル、米ドル/円が約1.37兆米ドルです。割合は筆者の計算による約の値です。詳細表の個別ペアを取引高の大きい順に10まで並べると、すべて米ドルを含んでいます(筆者が確認)。
クロス円とマイナー通貨ペア
米ドルを含まない組み合わせを、クロス通貨ペアと呼びます。円が絡むものはクロス円で、豪ドル/円、英ポンド/円、ユーロ/円などです。ユーロ/円の取引高は、BIS の詳細表で1日平均約992億米ドル、全体の約1.0%(筆者計算)でした。
マイナー通貨ペアやエキゾチックと呼ばれるのは、一般に新興国の通貨を含む組み合わせです。取引量が相対的に少なく、スプレッドが広がりやすく、情報も限られるのが一般的です。
世界と日本の店頭 FX で取引の集中先は違う
世界で最も取引されるペアと、日本の店頭 FX で最も取引されるペアは別です。金融先物取引業協会の統計では、2026年9月の店頭 FX の取引金額は約1,227兆円で、米ドル/円がそのうち約90.3%(筆者計算)を占めていました。直近12か月(2025年10月〜2026年9月)の合算でも、約85.8%(筆者計算)です。
| 項目 | 世界(BIS、2025年4月、確定値から筆者計算) | 日本の店頭 FX(2026年9月) |
|---|---|---|
| 1位 | ユーロ/米ドル 約20.7% | 米ドル/円 約90.3% |
| 2位 | 米ドル/円 約14.4% | 豪ドル/円 約2.6% |
| 3位 | 米ドル/人民元 約8.2% | 英ポンド/円 約2.2% |
| 何を表すか | 世界全体の外国為替取引のうち、そのペアの取引高の割合 | 協会の会員業者と顧客の取引金額に占める割合 |
割合はいずれも公表された額からの筆者計算で、約の値です。日本の集計は取引所 FX を含まず、取引金額の割合なので、個人だけの数字とは限らず、人数や口座数の割合でもありません。月ごとに順位が入れ替わることもあり、1か月の数字だけで傾向を決めつけることはできません。
この順位は、そのペアが「どれだけ取引されているか」を示すもので、有利さや儲かりやすさを示すものではありません。選ぶ基準にするなら、情報の多さや注文の通りやすさとして使う、というのが妥当です。
通貨ペアを選ぶ4つの軸|流動性・スプレッド・値動き・スワップ

4つの軸は、それぞれ別々に見るのではなく、互いのトレードオフとして見ます。たとえば、流動性が高いペアはスプレッドが狭くなりやすい一方で、値動きの大きいペアは利益の機会も損失の幅も大きくなります。
軸1 流動性|取引量が多いと何が違うか
流動性は、そのペアがどれだけ活発に取引されているかです。取引量が多いほど、買いたい人と売りたい人が揃いやすく、注文が通りやすくなる傾向があります。スプレッドも狭くなりやすいとされます。
ただし、いつでもそうとは限りません。重要な経済指標の発表前後には、流動性の高いペアでもスプレッドが広がったり、注文が思った価格で通らなかったりすることがあります。
軸2 スプレッド|通貨ペアで差が出る実質コスト
スプレッドは、買値と売値の差で、取引のたびに実質的にかかるコストです。通貨ペアによって水準が違い、一般に取引量の少ないペアほど広い傾向があります。
仮の数字で比べます。あるペアのスプレッドが0.2銭、別のペアが2.0銭だとします。1万通貨を1回売買するたびに、コストの差は約180円(1.8銭 × 1万通貨)です。回数が増えるほど差は積み上がります。実際のスプレッドは業者や時間帯で変わるため、自分が使う環境で確かめてください。
スプレッドの詳しい見方はFXのスプレッドの見方で説明しています。
軸3 値動きの大きさ|公的な指標「為替リスク想定比率」と pips の見方
値動きが大きいペアは、短時間で大きな利益も大きな損失も出ます。値動きの大きさは、1日にどのくらい動くかを pips で見るのが基本です。pips の見方はFXのpipsとロットの計算方法をご覧ください。
公的な指標として、金融先物取引業協会が毎週公表する「為替リスク想定比率」があります。日次の変動率(標準偏差)に、片側99%にあたる2.33を掛けて算出するもので、直近26週と130週のうち大きい方が使われます。協会の解説ページ(2026年10月に確認)では188の通貨ペアが対象と記載されています。個別のペアの最新の数値は、協会の公表ページで確認してください。この記事では数値を載せません。
軸4 スワップ|買いと売りで受け取り・支払いが変わる
スワップは、2つの通貨の金利差から生じる、日々の受け取りや支払いです。同じ通貨ペアでも、買いと売りで受け取りか支払いかが変わるのが一般的です。実際の金額は業者ごとに異なります。スワップの仕組みはFXのスワップポイント入門で詳しく説明しています。
4軸の比較表
| 軸 | 見ること | 初心者の注意点 |
|---|---|---|
| 流動性 | 取引量の多さ、情報の多さ | 指標発表時は例外。多いほど安全という意味ではない |
| スプレッド | 買値と売値の差 | 時間帯や業者で変わる。取引回数が多いほど効く |
| 値動き | 1日の動く幅(pips)、為替リスク想定比率 | 大きいほど利益も損失も大きく、ロスカットが近づく |
| スワップ | 受け取りか支払いか、その金額 | 変動する。為替差損が上回ることがある |
高スワップ通貨を初心者が持つ前に知りたいリスク

スワップが高いことは、利益が出ることを意味しません。高金利の通貨は、一般に値動きが大きく、為替差損がスワップの収入を上回ることがあります。持ってはいけないというわけではありませんが、リスクを理解したうえで、少額から確かめる姿勢が必要です。
スワップと為替差損を並べて比べる
仮の数字で並べます。あるペアを1万通貨買い、スワップが1日あたり50円とします。30日持てば、スワップの受け取りは合計で約1,500円です。一方、為替が2円下がれば、為替差損は1万通貨で約2万円になります。
この例の数字はすべて仮のものです。スワップは日々少しずつ積み上がりますが、為替差損は一度の値動きでまとめて出ます。高金利の通貨ほど、この差が大きくなりやすいことを覚えておいてください。
スワップは変動し、支払いに変わることもある
スワップは固定ではありません。各国の金利が変われば、水準も変わります。受け取りだったものが、支払いに変わることもあります。高金利の通貨を売る側は、一般にスワップを支払う側になります。仕組みと計算はFXスワップポイントとは?で説明しています。
国内の店頭 FX の取引では、トルコリラ/円は2026年9月に13位で取引金額の約0.05%、南アフリカランド/円は15位で約0.04%(いずれも筆者計算)でした。高金利の新興国通貨ペアが、取引全体に占める割合は小さいということです。取引する人が少ないペアは、情報も少なくなりがちです。
値動きが大きいペアはロスカットまでの余裕が小さい
値動きの大きいペアは、同じ資金でも評価損が短時間で膨らみ、ロスカットまでの余裕が小さくなります。ロスカットの仕組みはFXの証拠金維持率とロスカットにまとめています。
リスクを抑えたいなら、取引する数量を小さくして、実効レバレッジを低くしておくことが基本です。実効レバレッジの考え方は、レバレッジ規制の記事も参考にしてください。
取引時間帯との相性|会社員の夜に合わせて考える

外国為替市場は、東京、ロンドン、ニューヨークの順に取引の中心が移ります。通貨ペアによって、よく動く時間帯には違いがあります。ただ、時間帯でペアを選ぶのではなく、自分が画面を確認できる時間に、値動きとコストが許容できるペアを選ぶのが基本です。
東京・ロンドン・NY の時間帯と、動きやすい通貨ペアの傾向
あくまで傾向ですが、円が絡むペアは東京の時間帯、ユーロやポンドが絡むペアはロンドンの時間帯、米ドルが絡むペアはニューヨークの時間帯に動きやすいとされています。
会社員が夜に取引する場合は、日本時間の夜から深夜にかけて、ロンドンとニューヨークの時間帯が重なる局面に当たることが多くなります。取引が活発になりやすい一方で、値動きも大きくなりやすい時間帯です。夏時間と冬時間でずれが生じるため、時間帯の詳細はFXの取引時間ガイドで確認してください。
指標発表前後は初心者は見送る判断も
米ドルが絡むペアは、米国の雇用統計などの経済指標の発表前後に、値動きが急に大きくなることがあります。スプレッドが広がり、思った価格で約定しないこともあります。
初心者のうちは、発表の前後は新しい注文を出さない、という判断も選択肢です。指標の見方は雇用統計の解説が参考になります。
自分に合う通貨ペアを1〜3個に絞るチェックリスト

ここまでの基準を使って、候補を1〜3個に絞ります。資金、確認できる時間帯、許容できる値動きの3つを順番に考えます。
3つの質問で絞る
- 資金はいくらか。損失が出ても生活に影響のない金額を決め、その範囲で、数量を小さくして値動きに耐えられるペアを選ぶ。
- 確認できる時間帯はいつか。平日の夜に見るなら、その時間帯に取引が活発なペアを候補にする。
- 許容できる値動きはどのくらいか。1日に数十pips 動いても落ち着いていられるかを、自分に問いかける。
この3つに答えると、最初は米ドル/円のような取引量の多いペアになる人が多いはずです。それで問題ありません。ペアの数は、少ないほうが管理しやすくなります。
デモ・少額で確認すること
候補が決まったら、デモ取引か、ごく少額で次の点を確認します。
- 自分が取引する時間帯のスプレッドは、どのくらいか。
- 1日の値動きは、想像していたより大きくないか。
- 注文は思った価格で約定するか。
- スワップは、受け取りか支払いか。毎日の金額はいくらか。
損切りの考え方はFXの注文方法ガイドに、実効レバレッジの考え方はレバレッジ規制の記事にあります。
通貨ペアを増やすタイミング
通貨ペアを増やすのは、最初のペアで値動きとコストの感覚がつかめてからで十分です。増やしすぎると、それぞれのポジションと値動きを管理しきれなくなります。
取引を始める前に、利用する業者が金融庁・財務局に登録されているかも確認してください。財務局は、無登録で店頭デリバティブ取引(FX を含む)の勧誘を行う者への警告を公表しており、関東財務局も2026年2月25日に警告を公表しています。
まとめ|通貨ペアは「基準」で選び、確認してから増やす
通貨ペアの選び方の要点は、次の3つです。
- 流動性・スプレッド・値動き・スワップの4つの軸と、取引できる時間帯で選ぶ。
- 高スワップ通貨は、為替差損やスワップの変動というリスクとセットで考える。
- 候補は1〜3個に絞り、デモや少額でスプレッド、値動き、約定、スワップを確認してから増やす。
FX には元本割れのリスクがあり、利益は保証されません。この記事の数値例は仮のもので、実際の損益を示すものではありません。最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。
関連する記事として、FXの信託保全の仕組みとFXの税金と確定申告も参考になります。
参考資料は次のとおりです。
- BIS Triennial Central Bank Survey 2025(国際決済銀行、2025年4月調査)
- BIS 2025 Triennial Central Bank Survey Detailed tables(国際決済銀行、2026年6月公表の確定値。通貨別・ペア別の割合は詳細表からの筆者計算)
- 店頭FX概況(金融先物取引業協会、2026年10月15日更新)
- 為替リスク想定比率について(金融先物取引業協会)


